ベートーヴェン 交響曲第7番は、全4楽章にわたって力強いリズムが躍動する交響曲第7番 イ長調 作品92(Op.92)です。中でも第2楽章の「アレグレット」は、低い弦楽器が刻むリズムの上に旋律が重なっていく、静かで印象的な音楽として親しまれています。
「第2楽章はなぜ有名?」「『舞踏の神格化』の意味は?」「どの楽章から聴けばいい?」という疑問に、本物のオーケストラが公開した演奏の開始時刻へ、直接移動できるリンクをつけて答えます。楽譜を読めなくても、音の流れを感じられるよう、難しい言葉は図解を交えて説明します。
交響曲第7番とはどんな曲?特徴を最初に理解しよう
第7番はピアノソナタではなく、弦楽器、木管楽器、金管楽器、ティンパニを使うオーケストラ曲です。ベートーヴェンが1811年から1812年にかけて作曲し、1813年12月8日に公開初演されました。ベルリン・フィルの公式作品解説には全4楽章と約37分の演奏時間が示され、ベートーヴェン・ハウスの作品目録には作曲期間と献呈先が記録されています。
同じベートーヴェンの交響曲でも、第5番「運命」の劇的な4音や、第6番「田園」の自然を示す標題とは異なり、第7番の音楽は一定のリズムが形を変えながら何度も現れることによって勢いを生み出します。聴き手は旋律を追うだけでなく「同じリズムが今はどの楽器に移ったか」を探すと、作品が分かりやすくなります。
第7番には「舞踏の神格化」という呼び名もありますが、これは正式なタイトルではありません。後世の作曲家ワーグナーの評価に由来する表現で、その背景は後ほど説明します。
全4楽章の聴きどころ一覧|公式動画の開始位置から聴く
まず第1〜第4楽章の雰囲気を表で比較してみましょう。以下の開始時刻は、2023年のフランクフルト放送交響楽団・マレク・ホネック指揮の公式映像で公表されているものです。時刻のリンクを押すと、その楽章の直前から再生できます。
| 楽章 | 調性・速度 | 動画の開始 | 耳で探すポイント |
|---|---|---|---|
| 第1楽章 | イ長調 Poco sostenuto – Vivace | 0:00から | ゆっくりした序奏から、軽快な6/8拍子へ |
| 第2楽章 | イ短調 Allegretto | 13:28から | 静かな反復リズムと重なる弦楽器 |
| 第3楽章 | ヘ長調 Presto | 22:41から | 速いスケルツォとゆったりしたトリオ |
| 第4楽章 | イ長調 Allegro con brio | 31:21から | 止まらないリズムと強烈な終結 |
初めて聴く人は、まず第2楽章の13:28から聴いてみるとよいでしょう。次に第4楽章31:21の速さを体験し、最後に全曲を通して聴くと、静かな部分と激しい部分の違いが自然に分かります。再生時間や楽章の長さは演奏者によって異なります。
第1楽章|大きな序奏のあと、軽やかなリズムが踊り出す
第1楽章の最初はPoco sostenutoという、少し音を保つような落ち着いた導入です。オーケストラが強い和音を鳴らしたあと、オーボエやフルートなどの木管楽器が旋律を歌い、音が上へ上へと進みます。最初はどこに向かうのか分からないような雰囲気ですが、導入が終わると突然、元気な動きが始まります。
その速い主部がVivace(活発に)です。6/8拍子の「1・2・3、4・5・6」と数えられるリズムで、フルートが印象的な主題を示し、弦楽器やほかの管楽器が加わります。短い動きが何度も繰り返されるため、曲に自然な弾みが生まれるのです。
初めて聴くときは「序奏からVivaceに切り替わる瞬間」だけ探してみてください。リズムが速くなるだけでなく、木管楽器と弦楽器の音量のバランスまで変わり、音楽が一気に大きな流れになることが分かります。
ロチェスター大学イーストマン音楽学校の研究ページでは、導入部の調性の動きや6/8拍子の反復主題を楽譜とともに詳しく説明しています。
第2楽章|なぜ有名?「同じリズム」を重ねる仕組み
第2楽章はAllegretto(アレグレット)、イ短調。言葉の上では少し速い速度を示しますが、第7番の中ではもっとも落ち着いた雰囲気を持っています。冒頭は低い弦楽器が静かに音を刻み、短いリズムが何度も戻ってきます。
ここで大切なのがオスティナートという手法です。オスティナートは、短い音型やリズムをしつこいほど繰り返すこと。第2楽章では、この繰り返しの上に複数の楽器の旋律が積み重なり、響きが次第に厚くなります。耳に残るのは同じリズムなのに、音楽は止まらず大きく変化していくのが魅力です。
基本リズム
リズム
加わる
増える
音色が変わる
実際の音符の長さを示す図ではなく、同じリズムの上に楽器が増える流れを表しています。
途中にはイ長調に移り、少し明るく感じられる中間部もあります。それから再びイ短調の主題に戻り、楽器を減らしながら静かに終わっていきます。大きな音の部分と少ない楽器の部分を聴き比べると、楽章全体の作りがよく分かるでしょう。
「葬送行進曲のようだ」という感想もありますが、楽章の正式な題名は「葬送行進曲」ではありません。作曲者の指示はAllegrettoです。暗い雰囲気だけでなく、反復が生む音楽の高まりにも注目してみましょう。
第2楽章は初演当時から特に評判が高く、音楽之友社の作品解説やイーストマン音楽学校の資料では、聴衆の要望によってアンコールされたことが紹介されています。現在でも第2楽章だけを単独で聴いたり演奏したりする機会があります。
第3楽章|速いスケルツォとゆったりしたトリオ
第3楽章はPresto(プレスト)、ヘ長調。非常に速く、軽やかな旋律が何度も現れるスケルツォの部分と、速度が落ちて落ち着いたトリオの部分とを交互に聴かせます。
全体の流れは、簡単にいうと「速い→ゆったり→速い→ゆったり→速い」です。こうした少し長い形はA–B–A–B–Aと表せますが、実際には楽譜上の繰り返しや短い終結部もあります。音楽を聴く際は厳密な形式を覚える必要はなく、トリオが二度帰ってくるところに注目するだけでも十分です。
速い
ゆっくり
速い
ゆっくり
速く終わる
実際の反復指示や細部は省略した構造図です。
トリオでは、管楽器が落ち着いた旋律を奏で、その下でほかの楽器がしっかりした土台を作ります。スケルツォが戻るたびに、軽いリズムが急に速く感じられるのもおもしろい点です。第3楽章は2023年の公式演奏22:41からすぐ聴けます。
第4楽章|勢いを止めずに駆け抜けるフィナーレ
第4楽章はAllegro con brio(生き生きと速く)、イ長調です。初めから強い和音が現れ、短い休止のあと、速い主題が勢いよく進みます。第1楽章にあったリズムの弾みが、最後ではさらに強烈になったように聴こえます。
特に耳を向けたいのは、低い弦楽器が規則的に音を繰り返す部分です。その上で高い弦楽器や管楽器が動き続けるため、音楽全体が前へ押し出されるような感覚が生まれます。
終わりに近づくほど音量も大きくなり、オーケストラが一体となって終結へ向かいます。第2楽章の静かな反復と第4楽章の勢いのある反復を比べると、同じ「繰り返し」をベートーヴェンが全く違う表情に変えていることが理解できます。
ワーグナーが語った「舞踏の神格化」とは?
第7番を調べるとよく出てくる「舞踏の神格化」という言葉は、ベートーヴェンが付けた題名ではなく、後世の作曲家リヒャルト・ワーグナーによる評論上の表現です。イーストマン音楽学校はワーグナーの原文を引用し、第7番全体に満ちる強いリズムを分析しています。
「舞踏」は踊り、「神格化」は最も高いものとしてたたえること。踊りの動きが音楽として力強く理想化された、というイメージだと分かりやすいでしょう。だからといって舞台で必ず踊りを伴って演奏する曲ではありません。交響曲という器楽の形式を保ったまま、踊りのようなリズムに生命力を与えたという比喩です。
第1楽章の弾む6/8拍子、第2楽章の揺るがない繰り返し、第3楽章のスケルツォ、第4楽章の猛進するリズム。この4つを聴き比べると、この表現がなぜ生まれたか実感しやすくなります。
1813年の初演は慈善演奏会|第2楽章のアンコール
交響曲第7番の公開初演は1813年12月8日、ウィーン大学の講堂で開かれた傷病兵のための慈善演奏会でした。ベートーヴェン自身が指揮し、同じ演奏会では《ウェリントンの勝利》も演奏されました。
ベートーヴェン・ハウスの作品目録によれば、作曲は1811年9月ごろに進められ、1812年の自筆譜には8月13日という日付が記されています。最終的に第7番が公開されるのは翌1813年です。
献呈先はモーリッツ・フォン・フリース伯爵です。公式資料に書かれた献呈の事実と、後世の音楽の感想は分けて読むと、伝記的な逸話だけに頼らず作品を理解できます。
実際の演奏を比べてみよう|指揮者による違い
一度聴いて気に入った楽章があれば、同じフランクフルト放送交響楽団による別の公式演奏でも聴いてみましょう。2023年のマレク・ホネック指揮に対し、2016年のアンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮では、テンポの取り方や楽器のバランスが違って感じられます。
どちらもオーケストラが正式に公開している演奏なので、出所不明の再アップロード動画を使わずに比べられます。速い演奏が優れている、遅い演奏が間違いということではありません。第2楽章のリズムが厚くなる場所で、旋律の息づかいの違いに耳を向けてみましょう。
| 比べたい楽章 | 2023年公式演奏 | 2016年公式演奏 |
|---|---|---|
| 第2楽章(静かなリズム) | 13:28から | 14:22から |
| 第3楽章(速さの変化) | 22:41から | 23:08から |
| 第4楽章(激しい終結) | 31:21から | 32:49から |
どんな楽器を使う?第5番「運命」や第九との違い
交響曲第7番は弦楽器のほか、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットが各2本、ホルン・トランペットが各2本、ティンパニなどからなるオーケストラで演奏されます。第2楽章では弦楽器の旋律と反復がとくに分かりやすく、第3・第4楽章では管楽器も勢いよく参加します。
第7番に合唱はありません。 第4楽章に「歓喜の歌」が加わる有名な交響曲は第9番「第九」です。また、4音の動機が有名な交響曲第5番「運命」も別作品です。
交響曲第5番については交響曲第5番「運命」の意味・全4楽章の解説をご覧ください。ベートーヴェンの人生全体を知るにはベートーヴェンの人物記事へ。ピアノソナタの「月光」や「悲愴」についてはピアノソナタ全32曲の一覧にまとめています。
初版の楽譜を見るには?原典資料を確認しよう
IMSLPの交響曲第7番 Op.92 の資料ページには、古い出版譜や総譜・パート譜がまとまっています。楽譜を読むのが初めてでも、第2楽章の冒頭の短いリズムがどう繰り返されているかを探すだけで、聴いていた音が譜面とつながって感じられます。
作曲者に近い史料を確かめたい場合はベートーヴェン・ハウスの公式作品目録が役立ちます。自筆譜や初期の出版物の所在、当時の文書への案内を確認できます。楽譜データの閲覧・印刷・利用は配布元の条件に従ってください。
よくある質問
ベートーヴェンの交響曲第7番は何調ですか?
イ長調(A major)、作品番号はOp.92です。ただし第2楽章はイ短調、第3楽章はヘ長調になります。
なぜ第2楽章が有名なのですか?
静かな同じリズムが繰り返され、その上に弦楽器などの声部が重なって大きくなる音楽が印象的だからです。初演時にもアンコールされたという記録があります。
第2楽章はどこから聴けますか?
この記事で紹介している2023年の公式演奏では13分28秒から、2016年の公式演奏では14分22秒から始まります。
全曲の演奏時間は何分ですか?
おおむね37〜40分程度です。反復の有無や演奏テンポで変わります。
「舞踏の神格化」はベートーヴェンが付けた題名ですか?
いいえ。後世のリヒャルト・ワーグナーが、リズムに満ちた第7番を評した表現です。正式な曲名は交響曲第7番です。
第7番に歌詞や合唱はありますか?
ありません。合唱と独唱が第4楽章に入る有名な作品は、交響曲第9番「合唱付き」です。
交響曲第7番の初演はいつですか?
1813年12月8日、ウィーン大学講堂の傷病兵支援のための慈善演奏会です。ベートーヴェン自身が指揮を務めました。
初めてクラシックを聴く人にもおすすめですか?
第2楽章からなら聴き始めやすく、次に第4楽章の勢いを楽しめます。専門用語を知らなくても、同じリズムが何度も現れることを感じ取れます。
時代をさらに知る:第7番を作曲したころに進んでいた聴力の低下や集音器の記録はベートーヴェンの耳・難聴の解説で詳しく紹介しています。
この記事で参照した主な資料
- Beethoven-Haus Bonn|Symphony no.7 op.92(作曲・初演・献呈)
- ベルリン・フィル|Symphony No.7 in A major Op.92(楽章と演奏時間)
- イーストマン音楽学校|Symphony No.7(第2楽章・リズムの研究)
- 音楽之友社|ベートーヴェン交響曲第7番(初演とアンコール)
- フランクフルト放送交響楽団|公式4K演奏2023年
- フランクフルト放送交響楽団|公式演奏2016年
- IMSLP|Symphony No.7 Op.92(楽譜資料)
